一種ケレン ブラストで変わる塗膜寿命と施工の基礎知識

一種ケレン ブラストで変わる塗膜寿命と施工の基礎知識

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一種ケレンのブラスト工法が塗膜寿命を決める理由と正しい施工知識

ブラスト後4時間以内に塗装しないと、せっかくの1種ケレンが台無しになります。


この記事の3ポイントまとめ
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1種ケレン=ブラスト処理が最高グレード

除錆率95〜99%以上を誇るブラスト工法は、4種類のケレンの中で最も効果が高く、塗膜寿命を大きく左右します。

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費用相場は約3,000〜5,000円/㎡

1種ケレンは4種ケレンの10〜25倍のコストがかかりますが、塗膜寿命への影響は「塗装回数」や「塗料の種類」を大きく上回ります。

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施工後4時間以内の塗装が必須

素地調整後に放置すると活性化した金属面が急速に酸化します。プライマー処理までの時間管理が、施工品質を守る重要な鍵です。


一種ケレンとブラスト工法の基本——素地調整の最高峰とは

ケレンとは、英語の「Clean(クリーン)」を語源とする塗装前の下地処理作業のことです。金属表面に残るサビ・酸化被膜(ミルスケール)・旧塗膜・油分・汚れといった異物を取り除き、塗料がしっかり密着できる状態をつくる工程であり、塗装工事全体の中でも最も結果に影響する重要な工程です。


ケレンには1種から4種まで4段階の分類があります。


| 種別 | 主な工法 | 除錆率の目安 |
|------|----------|------------|
| 1種ケレン | ブラスト工法・酸洗い | 95〜99%以上 |
| 2種ケレン | 電動工具(ディスクサンダーなど) | 約50〜80% |
| 3種ケレン | 手工具(ワイヤーブラシなど) | 部分的(活膜残す) |
| 4種ケレン | サンドペーパーなどで軽く研磨 | ほぼなし |


その中でも最上位に位置するのが1種ケレンです。1種ケレンは「ブラスト工法」を用いて表面を研磨し、黒皮(ミルスケール)・赤サビ・旧塗膜をほぼ完全に除去し、清浄な金属面を露出させます。つまり、鋼材そのものの素顔を出す作業です。


除錆率95〜99%以上という数値がいかに高いかというと、2種ケレンで電動工具を使った場合の除錆率は約50〜80%にとどまります。残り20〜50%のサビや死膜が残った上に塗装をしても、その下からサビが進行し、塗膜が早期に剥がれるリスクが常につきまといます。これが原則です。


1種ケレン(ブラスト)と2種ケレン(電動工具)の処理方法の違いだけで、塗膜寿命に約50%もの差が出るとされています。「塗装の回数を増やす」「高性能な塗料を使う」ことよりも、下地処理の質が塗装耐久性に与える影響の方がはるかに大きいわけです。これは意外ですね。


参考リンク(ケレンの種類と規格について詳しく解説)。
ケレン(素地調整)の種類と規格を専門家が解説|原田鉄工


一種ケレンのブラスト工法4種類——ショットブラスト・エアーブラスト・ウェットブラスト・バキュームブラストの違い

一口に「ブラスト」といっても、実際には複数の工法が存在します。どの方式を選ぶかによって、施工精度・コスト・環境への影響が変わります。各方式の特徴を整理しておくことが現場判断の基本です。


① エアーブラスト(乾式ブラスト・サンドブラスト


コンプレッサで作った圧縮空気とともに研削材をノズルから高速噴射する方式です。複雑な形状にも対応でき、配管内部や組み立て品の内側など入り組んだ箇所にも届きやすいのが特長です。使用する研削材が「砂(スラグ・アルミナ)」の場合はサンドブラスト、「多角形状の鋼粒(グリット)」の場合はグリットブラストとも呼ばれます。


汎用性が高い反面、粉塵が広範囲に飛散しやすく、集塵装置や大型コンプレッサなどの設備が必要です。初期コスト・運用コストが4方式の中でも高めになります。


なお、かつてよく使われていた「珪砂を使ったサンドブラスト」は、砂に含まれる遊離シリカ(結晶性シリカ)が粉塵となり、吸引すると肺内に蓄積してじん肺(けい肺)を引き起こす危険性があることから、ISOで規格対象外となり、現在は多くの現場で使用が避けられています。日本の「じん肺法」や「粉じん障害防止規則」でも厳格な対応が求められています。これだけは覚えておけばOKです。


ショットブラスト機械式ブラスト)


モーターを動力として羽根車(インペラ)を高速回転させ、遠心力金属製球体(ショット)を投射する方式です。自動化されており、大面積・多ロット製品の素地調整に適しています。球状の研削材を使うため粉塵の発生・飛散が比較的少なく、コスト面でも優れています。


ただし、一定の方向・角度から投射するため、複雑な形状の内部や隅々には対応しにくい側面があります。橋梁の桁材や船体などの大型平面部位に多く採用されています。


③ ウェットブラスト(湿式ブラスト)


水と研削材を混合して圧縮空気で噴射する方式です。粉塵の発生を大幅に抑えられ、薄物や電子部品などデリケートな素材への精密加工が可能です。ただし、鉄鋼材など水に接触すると錆びやすい素材には使用できないケースがあるため、適用対象を選ぶ必要があります。


バキュームブラスト(吸引式ブラスト)


ノズル内部で研削材の噴射と回収を同時に行う方式で、研削材と粉塵の飛散をほぼゼロに抑えられます。屋外の橋梁や建物の外壁など、飛散防止が難しい現場での施工に適しており、養生作業の手間を最小化できます。研削力はやや低めで、主に平滑な面への適用になります。


参考リンク(ブラスト加工の各方式と原理・メリット・デメリットを図解で解説)。
ブラスト加工とは?代表的な加工方法の原理とメリット・デメリット|原田鉄工


一種ケレン ブラストの費用相場と2種ケレンとのコスト比較

1種ケレンの費用は、使用する研削材や施工条件によって異なりますが、おおむね1㎡あたり約3,000〜5,000円が相場です。一般的な戸建て住宅(外壁30坪=約100㎡)に仮に施工した場合、30万〜50万円程度のコストになる計算です。コストがかかるということですね。


他のケレン種別と比較すると、その差は歴然です。


| 種別 | ㎡単価の目安 |
|------|------------|
| 1種ケレン | 3,000〜5,000円 |
| 2種ケレン | 1,500〜2,500円 |
| 3種ケレン | 500〜1,500円 |
| 4種ケレン | 200〜500円 |


4種ケレンと比べると、1種ケレンは約10〜25倍のコストになります。それでも1種ケレンが採用される理由は明確です。素地調整の質が塗膜寿命を約50%左右するとされている以上、初期投資を惜しんで短命な塗膜を繰り返し塗り替えるよりも、トータルコストが低く抑えられるケースが多いからです。


長期間にわたって防食性能を維持する「重防食塗装系」では、現在使用されている橋梁塗装の寿命は長くて30年程度とされています。しかし素地調整の品質が低ければ、その寿命は大幅に短縮します。結論は「初期の素地調整品質がライフサイクルコストを決める」です。


なお、1種ケレンは一般住宅にはほとんど使われず、橋梁・船舶・タンク・プラント設備・海上構造物など過酷な環境下に置かれる大型鋼構造物の塗替え工事で主に採用されます。住宅の外壁塗装の見積書に「1種ケレン」が記載されることはまずありませんので、見積りを確認する際の判断基準として知っておくと役立ちます。


参考リンク(ケレンの種類ごとの費用・価格相場まとめ)。
塗装の寿命が決まる「ケレンの種類」完全ガイド|屋根工事の教科書


一種ケレン ブラスト後に絶対やってはいけない「4時間ルール」の落とし穴

1種ケレンで清浄な金属素地を露出させた直後、その表面は非常に活性化した状態になっています。サビの原因であった酸化被膜が完全に除去されているということは、裏を返せば、むき出しになった金属面が大気中の酸素や水分に直接さらされているということでもあります。この状態を放置すると、せっかくの1種ケレンが意味をなさなくなります。


一般的に、素地調整後は4時間以内にプライマー(さび止め塗装)を塗布することが推奨されています。特に屋外現場や湿度の高い環境では、素地調整後わずか数時間で「錆戻り」が始まるケースもあります。これは痛いですね。


この「4時間ルール」は現場担当者が意外と軽視しがちなポイントです。ブラスト施工は専門業者が行い、塗装は別業者が担当するような分業体制の場合、施工から塗装開始までに4時間以上のタイムラグが生じることがあります。そうなると、費用をかけた1種ケレンの効果が大幅に薄れてしまいます。


4時間以内の塗装が難しい場合、以下のような対策が現場で取られています。


- 🔒 防錆プライマーの先行塗布:ウォッシュプライマーエッチングプライマー)など速乾性の防錆下塗り材を使用する
- 🏭 ブラストと塗装を同一施設内で連続施工:工場内施工であれば、ブラスト設備と塗装設備を近接させ時間短縮が可能
- 🌡️ 温湿度管理:相対湿度85%以上の環境では塗装を避け、施工環境の管理を徹底する


素地調整後の表面管理は、仕上がりの美観だけでなく塗膜の長期耐久性を守るために欠かせない工程です。4時間が条件です。


参考リンク(ブラスト後の塗装工程と時間管理について)。
橋梁部分塗替え塗装マニュアル(案)|茨城県土木部(PDF)


一種ケレン ブラスト作業で見落としがちな粉塵・騒音リスクと作業員の安全管理

1種ケレンのブラスト作業は高い施工効果を持つ一方で、作業環境と周辺環境への影響が無視できません。現場担当者が事前に把握しておくべきリスクが複数あります。


まず粉塵のリスクです。ブラスト処理では、除去したサビ・旧塗膜・酸化被膜が細かい粒子となって飛散します。特に旧塗膜に鉛・クロム・PCBなどの有害物質が含まれている場合、粉塵を吸引することで作業員の健康被害につながるリスクがあります。防じん・防毒マスク、保護ゴーグル、防護服の着用は必須です。また、粉塵が飛散して周辺環境を汚染しないよう、養生シート・負圧集塵機の設置など飛散防止措置も義務的な対応となります。


次に騒音のリスクです。エアーブラストはコンプレッサの機械音と研削材が金属に衝突する音が組み合わさり、非常に大きな騒音が発生します。作業員の耳への影響だけでなく、近隣住民への迷惑にもなりかねません。バキュームブラストや湿式ブラストは騒音・粉塵が比較的少ないため、市街地や住宅密集地での工事に適した工法として選ばれることがあります。


さらに産廃処理のルールも見落とせません。ブラスト作業で発生したケレン屑(塗膜くず・研削材くず)は、事業活動に伴う廃棄物として廃棄物処理法上の「産業廃棄物」に該当します。適切な分別・収集・運搬・処分の管理が求められます。


安全管理の観点では、エアーブラスト作業は「特定粉じん作業」に指定されており、労働安全衛生法や粉じん障害防止規則に基づく適切な設備・管理が法的に義務付けられています。これは必須です。


参考リンク(エアーブラストに関わる法令・粉塵規制の概要)。
法令関係|株式会社不二製作所(ブラスト作業と特定粉じん作業の規定)


現場で役立つ独自視点——一種ケレン ブラストを「やり直せない工程」として捉える品質管理の考え方

塗装工事において、1種ケレンのブラスト処理は「完成後に確認できない工程」です。塗装が施されてしまえば、素地調整の状態は外から見えなくなります。この「見えなくなる工程」をいかに品質管理するかが、長期的な施工品質を左右します。


現場でよく起きる問題のひとつが、「見た目がきれいになればOK」という感覚的な判断です。しかし、ケレン作業の品質を正しく評価するには、国際的な規格を活用することが推奨されています。代表的なものが次の2つです。


ISO規格(ISO 8501-1):ブラスト清浄度をSa1・Sa2・Sa2.5・Sa3の4段階で規定しており、Sa3が最も高い清浄度(=1種ケレン相当)を示します。視覚的な比較写真が規格に含まれており、作業者が目視で品質を確認しやすい点が特長です。


SSPC(Steel Structures Painting Council)規格:アメリカに本部を置く産業・海上構造物の保護を目的とした組織の規格で、16種類の素地調整グレードが定義されています。国際的な大型プロジェクトや海上構造物の塗装工事では、この規格が採用されるケースが多くあります。


ケレン作業は施工完了後の写真記録と規格値照合による書面管理が重要です。施工前・施工中・施工直後の写真を残し、ISO規格との対比資料を施工記録に添付する習慣を持つことで、発注者との認識齟齬やトラブルを未然に防ぐことができます。


素地調整の品質管理を「工具の選定」「作業時間」だけで考えるのではなく、規格に基づく客観的な基準と記録管理の仕組みとしてとらえることが、現場の信頼性向上につながります。この考え方が条件です。


参考リンク(ブラスト加工のISOおよびSSPC規格について詳細解説)。
ブラスト加工の規格(ISO・SSPC)と素地調整の重要性|原田鉄工