ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)の種類と正しい選び方

ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)の種類と正しい選び方

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ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)の種類と選び方を徹底解説

SUS304を屋外埋設に使うと、数年で孔食が発生して配管交換コストが数十万円かかることがあります。


この記事でわかること
🔩
SUS304とSUS316の違い

化学成分・耐食性・価格差など、2つの材質の本質的な違いをわかりやすく整理します。

🏗️
JIS規格と管種の選び方

JIS G3448(薄肉)とJIS G3459(厚肉)の違い、現場用途別の正しい使い分けを解説します。

⚠️
施工時の腐食リスクと対策

保温材・異種金属接続・土壌埋設など、知らないと損する施工上の注意点をまとめました。


ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)のJIS規格と管種の種類


ステンレス鋼管には複数のJIS規格があり、建築設備の現場では主に2種類が使われています。規格を理解することが正しい選定の第一歩です。


まず代表的なのが、一般配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3448)です。これは「TPD」とも呼ばれ、給水・給湯・排水・冷温水・消火用水など幅広い建築設備配管を想定して規格化された薄肉タイプです。肉厚はAWS(亜鉛めっき鋼管)の約1/3で、軽量で施工性に優れているのが特徴です。推奨最高使用圧力は2.0MPa以下とされています。


もう一つが配管用ステンレス鋼鋼管(JIS G 3459)です。こちらは「TP」と表記され、より肉厚の大きい工業・プラント用途向けです。スケジュール番号(Sch)で肉厚が管理されており、Sch10・20・40などの種類があります。外径φ10.5mm~φ660.4mmまで適用範囲が広く、高圧・高温環境にも対応できます。




















規格 種類記号 肉厚 主な用途
JIS G 3448 SUS304TPD / SUS316TPD 薄肉(軽量) 給水・給湯・排水・冷温水・消火
JIS G 3459 SUS304TP / SUS316TP 厚肉(Sch管理) プラント・工業・高圧配管


建築設備の給排水・空調配管ではJIS G 3448が主流です。これが原則です。


なお、継手方式によって「TP-A(自動アーク溶接)」と「TP-D(薄肉タイプの電気抵抗溶接等)」という表記があります。現場で「SUパイプ」「モルコ管」と呼ばれるものはTPDに相当し、プレス式・拡管式などのメカニカル継手で接合されます。施工要領書を必ず確認するのが鉄則です。


参考リンク:ステンレス協会による配管ガイド(JIS規格・認定継手一覧・水質指針を詳細掲載)
ステンレス協会 配管ガイド(PDF)


ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)の成分と耐食性の違い

SUS304とSUS316、どちらも「18-8ステンレス」と呼ばれる同じオーステナイト系ですが、耐食性には大きな差があります。意外ですね。


SUS304はクロム(Cr)約18%・ニッケル(Ni)約8%を主成分とします。表面に形成される「不動態皮膜」(厚さわずか約3nm=100万分の3mm)がさびを防ぐ仕組みで、通常の内陸環境では十分な耐食性を発揮します。建築設備配管の大半に使われているのはこの理由からです。


SUS316はSUS304の成分にモリブデン(Mo)を2〜3%追加した材質です。モリブデンがクロムの自己修復作用を高め、塩化物イオンが多い環境でも不動態皮膜を安定させます。つまり塩素・酸に対してSUS304より格段に強いのが特徴です。
































項目 SUS304 SUS316
クロム(Cr) 18〜20% 16〜18%
ニッケル(Ni) 8〜10.5% 10〜14%
モリブデン(Mo) なし(原則) 2〜3%
塩素イオンへの耐性 △(弱い) ○(強い)
価格目安(kg単価) 約700〜900円/kg 約1,050〜1,450円/kg


ここで注意が必要なのは、SUS304でも水道水中の残留塩素(0.1mg/L以下)によって腐食が生じる可能性があることです。水道水が「塩素が少ないから安全」と思いがちですが、温度・pH・塩化物イオン濃度・残留塩素の組み合わせ次第では、孔食(ピットコロージョン)や応力腐食割れ(SCC)が発生します。


SUS304とSUS316のコスト差は概ね1.4倍前後です。価格差が大きいため、環境条件を正確に把握して適切に使い分けることが、トータルコストの最小化につながります。SUS316が必要な場面でSUS304を使ってしまうと、早期交換コストで数十万円以上の損失になるケースもあります。


参考リンク:SUS304・SUS316の成分・耐食性・価格差を詳解
SUS304とSUS316の違い|金属加工のワンポイント講座


ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)の建築設備における用途と選び方

材質と規格の知識を踏まえて、実際の建築設備現場でどう選ぶかを整理します。結論はシンプルです。


SUS304を使う場面は、通常の屋内給水・給湯・排水・冷温水・消火配管です。塩化物イオンが少なく、高温・酸性環境でない一般的な建築物の内部配管では、SUS304で十分な耐食性が得られます。コストも抑えられるため、多くの建築設備工事ではSUS304(TPD)が標準です。


SUS316を選ぶ場面は以下の4条件のいずれかに当てはまる場合です。



  • 🌊 海岸から500m以内など沿岸部の建物:塩分を含む外気・飛来塩水が配管外面に影響します

  • 🧪 医療・食品・化学プラント用途:薬品・酸性環境・殺菌薬剤の影響を受けやすい現場

  • 🌡️ 高温(60℃超)の給湯配管で屋外露出・埋設:温度上昇で塩化物イオンの腐食リスクが急増します

  • 🏗️ 温泉・プール・海水利用施設:塩化物濃度が水道水より大幅に高い環境


SUS316が条件です。逆に言えば、それ以外の一般的な屋内環境ではSUS304で十分対応できます。


なお、ステンレス協会の配管ガイドでは、一般配管用ステンレス鋼鋼管として「SUS304TPD(通常の給水・給湯など)」と「SUS316TPD(水質・環境からSUS304より耐食性が要求される用途)」が明確に使い分けされています。設計段階でこの区分を確認しておくことで、施工後のトラブルを防げます。


ステンレス鋼管の期待耐用年数は、建設大臣官房技術調査室監修の資料によると30年以上とされています。ただしこれは管本体の話で、実際の寿命はメカニカル継手のゴムパッキンガスケット)の耐久性に左右されます。ステンレス協会では給水用途で100年以上・給湯用途(80℃)で40年を期待寿命としていますが、これもパッキン次第です。定期的な継手点検が必要です。


参考リンク:建築設備でのSUS304・SUS316の使用箇所と選定基準を詳解
建築設備で使用される配管 ‐ ステンレス鋼鋼管 SUS304とSUS316の違い


ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)施工時の腐食リスクと対策

「ステンレスだから錆びない」と信じていると、意外な場所で腐食が起きます。施工時の注意点を知っているかどうかで、現場トラブルの発生率が大きく変わります。


① 保温材による外面応力腐食割れ


グラスウールロックウールなどの保温材には微量の塩化物イオンが含まれています。雨水や漏水が保温材に浸み込み、配管外面で水が乾燥・濃縮を繰り返すと、塩化物イオンが高濃度になって外面から応力腐食割れ(ESCC)が発生します。特に屋外の給湯配管に起きやすい現象です。


対策として、保温材はハロゲンイオンが少ないもの(RW・GW・硬質ウレタンフォーム・ビーズ法ポリエチレンフォームは使用実績あり)を選び、端末のシール処理を徹底して雨水侵入を防ぐことが重要です。これが条件です。


② 土壌・コンクリート埋設時の腐食


SUS304を裸のまま土壌に埋設すると、地域によっては数年以内に孔食が発生します。ステンレス協会の施工マニュアルでは、SUS304を給水管として土壌埋設する場合は「ポリエチレンスリーブ被覆」または「ペトロラタム系防食テープ(1/2重ね一回巻き)+防食用ビニルテープ(1/2重ね一回巻き)」の防食処置が必須とされています。


また、SUS316を採用すれば防食処置のハードルが下がりますが、コスト差(約1.4倍)を考慮した判断が必要です。コンクリート埋設でも同様に防食対策が求められます。


③ 異種金属との接続(ガルバニック腐食)


ステンレス鋼は電位が高い「貴金属」寄りの性質を持ちます。炭素鋼管(亜鉛めっき鋼管・SGP)やアルミニウム合金管などと直接接続すると、電位の低い金属(炭素鋼・アルミ)側で急激な腐食が起こります。これがガルバニック腐食(異種金属接触腐食)です。痛いですね。


銅管とステンレスは互いに電位が近いため直接接続しても問題ない場合が多いですが、炭素鋼系との接続では絶縁処理が必須です。絶縁フランジ・絶縁ユニオン・絶縁テープなど、適切な絶縁継手を使って電流回路を遮断することが重要です。


参考リンク:ガルバニック腐食のメカニズムと絶縁処理方法を詳解(ベンカン公式)
ガルバニック腐食|ステンレス配管の知識(ベンカン)


参考リンク:ステンレス配管Q&A(土壌埋設・継手選定・パッキン材質など網羅)
ステンレス協会 配管Q&A


現場担当者だけが気づく:ステンレス鋼管(SUS304/SUS316)のコスト最適化視点

ここまでは教科書的な解説ですが、実際の積算・設計段階でどう判断するかには独自の視点が必要です。


まず知っておきたいのは、ステンレス鋼管の価格は「エキストラ計算」で動くという点です。SUS304・SUS316はニッケルやモリブデンなどのレアメタルを含むため、市況(相場)に連動してエキストラ価格が変動します。同じSUS316TPDでも発注時期によって数十パーセント価格が変わることがあります。長期プロジェクトでは材料費の変動リスクを見込んだ積算が重要です。


次に、ライフサイクルコスト(LCC)で評価することが建築設備の材料選定の本質です。SUS316は初期材料費がSUS304の約1.4倍かかりますが、腐食リスクの高い環境でSUS304を使うと、5〜10年後に全面的な配管更新工事が必要になるケースがあります。配管更新工事の費用は、材料費の数倍以上になることが通常です。


さらに見落とされがちなのが管サイズのダウンサイジングです。亜鉛めっき鋼管や塩ビ管と比較して、ステンレス鋼管は内面の表面粗度が低く(滑らかで)、経年劣化で内面粗度がほとんど変化しません。これにより同じ流量を確保するために必要な管径を1サイズ小さくできる場合があります。管径を小さくすると材料費・支持金物・貫通穴のコストも下がるため、複合コストで評価するとステンレス鋼管の採用が有利になることも多いです。



  • 💰 初期コスト比較:SUS304≒SGPの1.5〜2倍前後、SUS316≒SUS304の約1.4倍

  • 🔄 LCCで評価:耐用年数30〜40年で管更新費用なしとすると、初期コスト差が吸収されやすい

  • 📐 管径ダウン:内面粗度が安定しているため、設計流速によっては1サイズ縮小が可能

  • ⚖️ 軽量化による施工費削減:亜鉛めっき鋼管の約1/3の重量で運搬・施工の労務費が下がる


現場での配管材料の選択は「材料費だけで比べない」が原則です。設計・積算の段階でLCC視点を持ち込むことが、長期的なコストダウンにつながります。これは使えそうです。


また、ステンレス鋼管はリサイクル性にも優れており、廃材・端材の80%以上が回収されてスクラップ原料になっています。SDGs・建物の環境性能評価(CASBEE等)の観点からも採用しやすい材料です。設計提案書や仕様比較資料にLCCとリサイクル性を盛り込むことで、建築主への説明が説得力を持ちます。


参考リンク:ステンレス配管のコスト・LCCについて詳細解説(ステンレス協会設計編マニュアル)
ステンレス協会 配管マニュアル 設計編(PDF)




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