耐火性木毛セメント板の一覧と建築用途

耐火性木毛セメント板の一覧と建築用途

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耐火性木毛セメント板の一覧

耐火性木毛セメント板の主な特性
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優れた防火性能

国土交通大臣認定の準不燃材料として建築基準法に適合

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多様な用途

内装・外装・天井材など幅広い建築用途に対応

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環境性能

間伐材を活用し、アスベスト不使用の環境配慮型建材

耐火性木毛セメント板の国土交通大臣認定製品

木毛セメント板は建築基準法で定められた防火材料として、国土交通大臣から様々な認定を受けています。これらの認定により、安全基準を満たした建材として建築現場で使用することが可能です。全国木質セメント板工業組合によると、木毛セメント板に関する主な認定は以下の通りです。

 

不燃材料としての認定:
国土交通大臣認定の不燃材料として、以下の認定番号が与えられています。

 

認定番号 旧認定番号 品目名
QM-9701 (通)第2031号 木毛セメント板
QM-9702 (通)第2032号 木毛パーライトセメント板
QM-9705 (通)第2011号 普通木片セメント板
QM-9706 (通)第2012号 アクリル樹脂系塗装/硬質木片セメント板

これらの認定により、木毛セメント板は法的に認められた防火性能を持つ建材として位置づけられています。厚さ15mm以上の木毛セメント板は準不燃材料として認められており、多くの建築用途に適用可能です。

 

耐火構造としての認定:
耐火構造としても様々な認定を取得しています。例えば、以下のような耐火構造の一部として認定されています。

 

部位 耐火時間 認定番号 品目名
外壁(非耐力) 1時間 FP060NE-9223 金属折板(0.35mm)、せっこうボード(15mm)、木毛セメント板(25mm)張り/軽量鉄骨下地外壁
屋根 30分 FP030RF-9036 高圧木毛セメント板・木毛セメント板・野地板・金属板葺屋根
屋根 30分 FP030RF-9054 木毛セメント板野地板屋根

これらの認定は、木毛セメント板が一定の耐火時間を確保できることを証明しています。壁耐火用木毛セメント板は「木毛セメント板JCMS-ⅡF1203」で性能と品質が規定されており、信頼性の高い製品として提供されています。

 

認定製品の特徴:
認定を受けた耐火性木毛セメント板には、一般的に以下のような特徴があります。

 

  • 厚さの規定(壁耐火構造用は25mm、30分耐火構造用は20mm厚など)
  • 施工方法の規定(取付け間隔、固定方法など)
  • 組み合わせる材料の指定(せっこうボードの厚さなど)

これらの規定に従って適切に施工することで、所定の耐火性能を発揮することができます。国土交通大臣の認定を受けた製品を使用することで、建築基準法に適合した安全な建築物を実現できます。

 

耐火性木毛セメント板の防火性能と特徴

木毛セメント板は優れた防火性能だけでなく、多様な特性を持つ多機能建材です。その特徴について詳しく見ていきましょう。

 

防火・耐火性能:
木毛セメント板は非常に高い耐火性を持ち、火災時の延焼を防ぐ役割を果たします。セメントと木毛の複合構造により、次のような防火特性があります。

 

  • 準不燃材料として国土交通大臣認定を取得
  • 建築基準法で防火材料として明記されている
  • 燃焼しにくく、火災時の延焼を抑制
  • 特定の厚さと施工方法により、30分〜1時間の耐火性能を実現

特に、厚さ25mmの木毛セメント板は、適切な施工方法と他の部材(せっこうボードや金属板など)との組み合わせにより、1時間の耐火性能を発揮することができます。

 

音響性能:
木毛セメント板の特徴的な構造は、優れた音響特性を持っています。

 

  • 遮音性:音の伝達を効果的に遮断
  • 吸音性:多孔質な構造により音の反響を低減
  • 音響調整:音の反射や吸収をバランス良く制御

これらの特性により、コンサートホールや教室、オフィスなど音環境が重要な空間で広く使用されています。

 

断熱性と調湿性:
木毛セメント板は優れた断熱性と調湿性を持っています。

 

  • 空気層による断熱効果を発揮し、熱の伝導を抑制
  • 木材とセメントの複合構造による高い熱抵抗値
  • 水分の吸放出により室内の湿度を自然に調整
  • 結露の防止と快適な室内環境の維持に貢献

これらの特性は、建物のエネルギー効率を向上させるとともに、健康的な室内環境を作り出すのに役立ちます。

 

耐久性と強度:
木毛セメント板はセメントによって強化されているため、高い耐久性と強度を持っています。

 

  • 腐食や湿気に対する高い耐性
  • 長期間の使用に耐える堅牢性
  • 屋外環境でも劣化しにくい特性
  • 衝撃に対する一定の耐性

意匠性と仕上げ:
木毛セメント板は自然な風合いと多様な表面テクスチャを持ち、デザイン性にも優れています。

 

  • 自然な木の質感と独特の表面パターン
  • 様々な塗装や仕上げに対応可能
  • コンクリート調の外観も実現できるデザイン性
  • 空間に温かみと質感をもたらす素材感

これらの多様な特性が組み合わさることで、木毛セメント板は単なる防火材料にとどまらない、多機能な建築材料として評価されています。

 

耐火性木毛セメント板の建築での活用事例

耐火性木毛セメント板は、その優れた防火性能と多機能な特性から、様々な建築用途で活用されています。具体的な活用事例を見ていきましょう。

 

外壁材としての活用:
木毛セメント板は耐火性と耐候性を兼ね備えているため、外壁材として広く使用されています。

 

  • ネオマ耐火スパンウォールとして、60分耐火構造の外壁に使用
  • 厚さ25mmの木毛セメント板と専用耐火目地材を組み合わせた耐火外壁
  • 606mmピッチ以下の胴縁に取り付けて使用
  • 断熱材(ネオマフォームなど)と組み合わせて高性能外壁を実現

例えば、「ネオマ耐火スパンウォール」では、木毛セメント板を室内側に配置し、ネオマフォームを屋外側にした構造で、耐火性能と断熱性能を両立させています。

 

天井材・屋根材としての活用:
木毛セメント板は天井材や屋根下地材としても広く活用されています。

 

  • 30分耐火屋根構造として認定された木毛セメント板野地板屋根
  • オフィスや店舗の天井材としての使用
  • RC造やS造の最上階天井裏に断熱材として施工
  • 優れた防音性と断熱性を活かした屋内天井材

特に「TSボード」「シャオンボードF」などの商品名で、30分耐火認定を取得した屋根構造に使用されています。認定番号FP030RF-9036、FP030RF-9054などの製品が該当します。

 

内装材としての活用:
木毛セメント板は内装材としても多くの利点があります。

 

  • 自然な風合いと質感を活かしたデザイン性の高い内装仕上げ
  • 吸音性を活かした音響調整が必要な空間での使用
  • 調湿性を活かした健康的な室内環境の実現
  • 耐火性能を備えた内装材としての使用

例えば、東京都豊島区池袋のオフィス事例では、木毛セメント板をコンクリート調の壁として活用し、シックなデザインのオフィス空間を実現しています。工期短縮とデザイン性の両立という点で高い評価を得た事例です。

 

特殊用途での活用:
その他、木毛セメント板は特殊な用途でも活用されています。

 

  • 防火区画や耐火壁としての使用
  • 遮音壁や防音室の壁材としての活用
  • 耐火倉庫や防火シャッター周りの耐火被覆材
  • 煙突や配管の耐火被覆材

特に石綿(アスベスト)含有建材が使用されなくなった後の代替材料として、安全性の高い木毛セメント板が重要視されています。

 

建築基準法における位置づけ:
木毛セメント板は建築基準法においても明確に位置づけられています。

 

  • 準不燃材料として認定(厚さ15mm以上の木毛セメント板)
  • 耐火構造の構成部材として認定
  • 防火区画の構成材料として使用可能
  • 特定防火設備の周囲の補強材としても活用

これらの多様な活用事例は、木毛セメント板の多機能性と安全性の高さを示しています。単なる防火材料ではなく、意匠性や機能性を兼ね備えた総合的な建築材料として評価されているのです。

 

耐火性木毛セメント板の施工方法と注意点

耐火性木毛セメント板の性能を十分に発揮させるためには、適切な施工方法と注意点を理解することが重要です。ここでは、認定された耐火構造としての施工方法と一般的な施工上の注意点について解説します。

 

耐火認定構造としての標準施工仕様:
耐火構造として認定を受けるためには、以下のような標準施工仕様に従う必要があります。

 

  1. 下地の準備
    • 胴縁は910mm間隔(または606mm以下)に不陸がないように取り付ける
    • 柱および間柱にしっかりと固定する
    • C-100×50×20×2.3mm以上の鉄骨を使用
  2. 木毛セメント板の取り付け
    • ビスにて450mm間隔以内に取り付ける
    • T型ジョイナーの使用が可能
    • せっこうボードは木毛セメント板と100mm以上目地をずらして取り付ける
  3. 外装材の取り付け(耐火外壁の場合)
    • 金属折板の接合部は30mm以上重ねる
    • ビスを210mm間隔以内でせっこうボードの上より胴縁に取り付ける
    • 外装材の種類は認定内容に従う
  4. 目地処理(60分耐火構造の場合)
    • 木毛セメント板の小口部に専用耐火目地材(熱膨張性目地材)を取り付ける
    • 30分耐火構造の場合は特別な目地材は不要

ネオマ耐火スパンウォールの施工ポイント:
ネオマ耐火スパンウォールのような複合材の場合は、以下のポイントに注意が必要です。

 

  • ネオマスパンビスⅠ(指定ビス)を使用する
  • ネオマフォーム面を屋外側、木毛セメント板を室内側にして取り付ける
  • ビスは幅方向@455以下、長さ方向胴縁ピッチ以下で取り付ける
  • ビスはネオマフォーム部分を貫通させ、木毛セメント板表面まで達するようにする
  • ビス穴の補修は不要

一般的な施工手順と必要な道具:
一般的な木毛セメント板の施工には、以下の道具と材料が必要です。

 

必要な道具:

  • 電動ドリル
  • ネジガンまたはハンドネジドライバー
  • メジャーやコンパス
  • サンダー(必要な場合)
  • ニッパー
  • ゴーグル、マスク、手袋(安全用具)

必要な材料:

  • 木毛セメント板
  • 木工用ネジ
  • ボンド(木毛セメント板用)
  • シーリング材(必要な場合)
  • 塗装やシーラント(仕上げ用)

施工上の注意点:

  1. 安全対策
    • 作業中は適切な保護具を着用する
    • 粉じん対策として十分な換気を確保する
    • 大型パネルの取り扱いは複数人で行う
  2. 材料の取り扱い
    • 木毛セメント板は水濡れを避けて保管する
    • 運搬時に角欠けや割れが生じないよう注意する
    • 加工時には専用工具を使用するとよい
  3. 施工精度
    • 不陸のない下地を確保する
    • 適切な間隔でのビス固定を徹底する
    • 目地の位置や幅を均一に保つ
  4. 耐火性能の確保
    • 認定仕様に厳密に従う
    • 目地材の施工を確実に行う
    • 貫通部の処理を適切に行う
  5. 仕上げ
    • 必要に応じてシーリング材を使用して隙間を埋める
    • 防水性や防湿性を向上させる仕上げを検討する
    • 意匠性を高める塗装やシーラントを適用する

これらの施工方法と注意点に従うことで、耐火性木毛セメント板の性能を最大限に発揮させることができます。特に耐火構造として認定を受けるためには、認定内容に準拠した施工が不可欠です。

 

耐火性木毛セメント板のサステナビリティと環境性能

近年、建築業界ではサステナビリティや環境配慮が重要なテーマとなっています。耐火性木毛セメント板は、防火性能だけでなく環境面でも優れた特性を持つ建材です。ここでは、木毛セメント板の環境性能とサステナビリティについて検討します。

 

間伐材の有効活用:
木毛セメント板の主要な環境上の特徴のひとつは、間伐材を有効活用している点です。

 

  • 国産ヒノキなどの間伐材から生産される木毛を活用
  • 森林の健全な育成に貢献する間伐材の利用促進
  • 「間伐材マーク認定書」を取得している製品も存在
  • 木材の有効利用による資源の循環利用を実現

間伐材は、森林の健全な成長を促すために間引かれる木材ですが、活用先が限られていることが課題でした。木毛セメント板はその有効活用先として重要な役割を果たしています。

 

健康性と安全性:
木毛セメント板は人体に有害な物質を含まない健康建材です。

 

  • アスベストなどの有害物質は一切含まない
  • シックハウスの原因となる物質も含まない
  • アンモニアやメチルアミン等の脱臭性にも優れている
  • 調湿効果により快適な室内環境を実現

特に、アスベスト含有建材の代替材料として、健康面でも安全な選択肢となっています。健康と環境に配慮した建材として、持続可能な建築に貢献しています。

 

リサイクル性と省資源:
木毛セメント板の製造過程と廃棄時の環境負荷も低減されています。

 

  • 製造時の端材・残材等のリサイクルを推進
  • 「信州リサイクル製品認定証」などを取得した製品も存在
  • 製造工程でのエネルギー消費も比較的少ない
  • 廃棄時も再利用や適切な処理が可能

木毛セメント板の製造会社の中には「合法木材供給事業者認定書」を取得し、持続可能な木材調達に取り組んでいる企業もあります。

 

長寿命化による資源節約:
耐久性の高い木毛セメント板は建物の長寿命化にも貢献します。

 

  • 腐食や湿気に強い特性により長期使用が可能
  • メンテナンス頻度の低減による資源とコストの節約
  • 建物の価値維持に貢献する耐久性
  • 建材の交換頻度低減によるCO2排出量削減

カーボンニュートラルへの貢献:
木質建材としての側面から、木毛セメント板はカーボンニュートラルな建材と言えます。

 

  • 木材部分は成長過程でCO2を固定
  • セメント部分はCO2排出があるものの、木材とのバランスで環境負荷を低減
  • 木造建築の推進を通じた低炭素社会への貢献
  • 地域の木材産業活性化を通じた持続可能な林業への貢献

今後のサステナブル建材としての展望:
耐火性木毛セメント板は、今後も環境性能を高めながら進化していく可能性があります。

 

  • セメントの一部をより環境負荷の少ない素材に置き換える研究
  • バイオマス起源の接着剤や添加物の開発
  • カーボンニュートラルセメントの開発と導入
  • 解体後のリサイクルシステムのさらなる向上

このように、耐火性木毛セメント板は防火性能と環境性能を両立した建材として、今後のサステナブルな建築において重要な役割を果たすことが期待されています。単なる耐火材料ではなく、環境に配慮した総合的な建築材料として、その価値はますます高まっています。