硫酸水素ナトリウムの化学式と作り方!性質や危険性と用途の違い

硫酸水素ナトリウムの化学式と作り方!性質や危険性と用途の違い

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硫酸水素ナトリウムの化学式と作り方

硫酸水素ナトリウムの基礎知識
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化学式と別名

式はNaHSO₄。重硫酸ナトリウムとも呼ばれる酸性塩です。

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主な用途

トイレの尿石除去や金属の表面処理、pH調整剤として活躍します。

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取り扱いの注意

強酸性を示すため、皮膚やコンクリートへの腐食性に要注意です。

硫酸水素ナトリウムの化学式と性質やpHの違い

 

建築やメンテナンスの現場において、薬品の正しい知識を持つことは安全管理上非常に重要です。特に洗浄剤表面処理剤として配合されることの多い「硫酸水素ナトリウム」について、まずはその物質的な特性を詳細に理解しておく必要があります。
硫酸水素ナトリウムは、化学式 NaHSO₄ で表される無機化合物です。ナトリウムイオン(Na⁺)、水素イオン(H⁺)、硫酸イオン(SO₄²⁻)から構成されています。この物質にはいくつかの別名があり、現場や製品ラベルによっては以下のような名称で記載されていることがあります。

外観は白色の粉末、または粒状の結晶であり、吸湿性があります。無水物と一水和物(NaHSO₄・H₂O)が存在しますが、市販されている工業用薬品の多くは無水物またはその混合物です。
水溶液のpHと酸性度について
硫酸水素ナトリウムの最大の特徴は、その強力な酸性です。「中性塩」である硫酸ナトリウム(Na₂SO₂)とは異なり、分子内に解離可能な水素イオン(H⁺)を含んでいるため、水に溶かすと速やかに電離して酸性を示します。
具体的には、1mol/Lの水溶液において、pHは約1以下を示します。これは希硫酸と同程度の酸性度であり、家庭用の酸性洗剤よりも強力な作用を持つ場合があります。建築現場においては、コンクリートのアルカリ中和や、頑固な無機汚れの分解にこの酸性が利用されますが、同時に金属や生体組織への攻撃性も高いことを意味します。
以下の表は、間違いやすい硫酸ナトリウムとの性質の違いをまとめたものです。

特性 硫酸水素ナトリウム (NaHSO₄) 硫酸ナトリウム (Na₂SO₄)
液性 (水溶液) 酸性 (pH < 1) 中性 (pH ≒ 7)
主な用途 洗浄剤、pH降下剤、金属表面処理 入浴剤、ガラス原料、乾燥剤
反応性 重曹などと反応して二酸化炭素を発生 安定しており反応性は低い
吸湿性 あり (潮解性あり) なし (無水物の場合)


この違いを理解していないと、「同じ硫酸塩だから安全だろう」と誤認して重大な事故につながる恐れがあります。特に、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)と混合すると、酸性である硫酸水素ナトリウムが反応し、有毒な塩素ガスが発生するため「混ぜるな危険」の対象となります。
職場のあんぜんサイト:硫酸水素ナトリウム(GHSモデル SDS情報)
ここでは、厚生労働省による詳細な安全データシート(SDS)が確認でき、物理的化学的性質や危険有害性の詳細な区分が記載されています。

硫酸水素ナトリウムの作り方と中和反応の仕組み

工業的に硫酸水素ナトリウムを製造する方法はいくつか存在しますが、基本的な化学反応の仕組みを理解することで、現場での緊急時の中和処理や、副生成物のリスク管理に役立ちます。主な生成プロセスは以下の2通りです。
1. 水酸化ナトリウムと硫酸の中和反応
最も基本的な生成方法は、強塩基である水酸化ナトリウム(NaOH)と、強酸である硫酸(H₂SO₄)を反応させる方法です。この際、モル比(物質量の比率)を厳密に 1:1 に制御する必要があります。
化学反応式は以下の通りです。


  • NaOH + H₂SO₄ → NaHSO₄ + H₂O

通常、酸とアルカリの中和反応では塩と水ができますが、硫酸は「二価の酸」であるため、水素イオンを2つ放出できます。水酸化ナトリウムが不足している(1:1の比率)状態では、硫酸の水素イオンが1つだけ中和され、もう1つの水素イオンが残った状態で塩になります。これが「酸性塩」である硫酸水素ナトリウムができる仕組みです。
もし、水酸化ナトリウムを2倍量(2:1)加えて完全に中和してしまうと、以下のようになり、中性の硫酸ナトリウムになってしまいます。


  • 2NaOH + H₂SO₄ → Na₂SO₄ + 2H₂O

このように、混合比率によって生成物が劇的に変わる点は、化学洗浄剤を現場で希釈・混合する際にも意識すべき重要なポイントです。
2. 塩化ナトリウムと硫酸の反応(マンハイム法)
工業的に大規模に生産する場合や、塩酸の製造プロセスの一環として生成される方法です。食塩(塩化ナトリウム NaCl)に濃硫酸を加え、適度な熱を加えることで反応させます。
化学反応式は以下の通りです。


  • NaCl + H₂SO₄ → NaHSO₄ + HCl↑

この反応では、副生成物として塩化水素(HCl)ガスが発生します。これを水に溶かしたものが塩酸です。つまり、硫酸水素ナトリウムは塩酸製造の際の「副産物」として得られることが多い物質でもあります。
実験室レベルでの作成と結晶化
実験室などで結晶を取り出す場合は、上記の中和反応を行った水溶液を加熱濃縮し、冷却することで結晶を析出させます。しかし、温度管理を誤ると無水物ではなく一水和物になったり、吸湿性が高いために乾燥が難しかったりと、純度の高い結晶を作るにはコツがいります。
建築現場や清掃業務においては、自作することは推奨されません。市販の工業用グレードまたは試薬特級など、用途に合わせて品質保証された製品を購入・使用するのが鉄則です。不純物が混ざった自家製薬品は、予期せぬ部材の変色や腐食を引き起こすリスクがあるためです。
株式会社日本触媒:重硫酸ナトリウム(製品情報)
工業的な製造プロセスを経て作られた製品のスペックや、微粉末タイプなどの形状の違い、荷姿(25kg紙袋など)について確認できます。

硫酸水素ナトリウムの用途と洗浄剤としての毒性の関係

硫酸水素ナトリウムは、その特性から「固体の硫酸」として扱われることが多く、液体硫酸よりも運搬や計量が容易であるため、多岐にわたる用途で使用されています。特に建築・ビルメンテナンス業界では、強力な洗浄効果を利用する場面が多々あります。
1. トイレ用洗剤(尿石除去剤)
最も身近で強力な用途が、トイレの「尿石(にょうせき)」除去です。尿石は、尿に含まれるカルシウムなどが固着したアルカリ性の汚れ(炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの複合体)です。
硫酸水素ナトリウムの強酸性は、このアルカリ性の固形物を化学的に分解・溶解する能力に優れています。


  • 反応メカニズム: 酸が炭酸カルシウムと反応し、水溶性の塩と二酸化炭素と水に分解します。

  • メリット: 塩酸ベースの洗剤と比較して、ガス(塩化水素)の揮発が少なく、配管への攻撃性が比較的マイルド(それでも強力ですが)である点や、粉末状でピンポイントに散布できる利点があります。

2. 建築部材の「白華(エフロレッセンス)」除去
コンクリートやタイル目地から染み出す白い粉「白華(エフロ)」は、水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応してできた炭酸カルシウムが主成分です。これもアルカリ性の汚れであるため、硫酸水素ナトリウム水溶液を用いることで効果的に洗浄・除去できます。
タイル工事後の酸洗い作業において、塩酸の代用または配合成分として使用されることがあります。
3. 金属の表面処理(酸洗い)とpH調整
塗装やメッキを行う前の金属表面のサビ落とし(酸洗い)に使用されます。また、アルカリ性の排水が出る現場において、排水基準を満たすための「pH調整剤(中和剤)」としても利用されます。液体の硫酸を使うよりも、粉末を投入する方が管理しやすく、安全性が高いため重宝されます。
毒性と安全性のバランス
「毒性」という観点では、硫酸水素ナトリウム自体に劇的な急性毒性(青酸カリのような)はありませんが、**「腐食性」**こそが最大の毒性と言えます。


  • 皮膚への影響: 汗や水分と反応して高濃度の酸となり、化学熱傷を引き起こします。

  • 吸入毒性: 粉末を吸い込むと、気道粘膜を激しく刺激し、咳や肺水腫の原因となります。

一部の「エコ洗剤」や「自然派クリーナー」として販売されている製品にも、主成分として含まれていることがありますが、「自然派=安全」ではありません。食品添加物(膨張剤の助剤など)としても認可されていますが、それは極微量で使用される場合の話であり、洗浄剤グレードのものを素手で触ることは厳禁です。
特に、密閉されたトイレ個室や狭い現場での作業時は、粉塵の吸入リスクが高まります。防毒マスクまでは必要ない場合が多いですが、防塵マスク保護メガネは必須です。
日本バルブ工業会:水まわりの洗浄と洗剤の知識
酸性洗剤が金属製品(蛇口や配管)に与える影響や、種類の違いによる使い分けについて、専門的な視点から解説されています。

硫酸水素ナトリウムのコンクリートへの影響と廃棄方法

ここは建築従事者が最も注意すべきポイントであり、一般的な化学事典にはあまり詳しく書かれていない「現場視点」の独自情報です。硫酸水素ナトリウムは洗浄に役立つ一方で、使い方を誤ると建物の寿命を縮める原因になります。
コンクリート・モルタルへの攻撃性
コンクリートは本質的にアルカリ性の素材です。セメントの水和反応によって生成される水酸化カルシウムが、内部の鉄筋をサビから守っています(不動態被膜の形成)。
硫酸水素ナトリウムは「硫酸塩」でありかつ「酸」であるため、コンクリートに対して二重のダメージを与える可能性があります。


  1. 中性化の促進: 酸性成分がアルカリ分を中和してしまい、コンクリートのpHを下げます。これにより、内部の鉄筋が錆びやすくなります。

  2. 硫酸塩による膨張破壊(サルフェートアタック): 硫酸イオン(SO₄²⁻)がセメント中の成分(アルミン酸三カルシウムなど)と反応し、「エトリンガイト」という針状結晶を生成します。この結晶は生成時に体積が膨張するため、コンクリート内部から圧力をかけ、ひび割れや崩壊を引き起こす現象です。

したがって、床の洗浄などで硫酸水素ナトリウムを使用した後は、**「大量の水で完全に洗い流す」こと、そして可能であれば「弱アルカリ性の薬剤で中和処理を行う」**ことが、建物を守るために必須の工程となります。単に水を流すだけでは、多孔質のコンクリート内部に酸分が残留し、長期的な劣化を招く恐れがあります。
適切な廃棄方法と中和処理
現場で余った硫酸水素ナトリウム水溶液や、洗浄後の廃液をそのまま側溝や下水に流すことは、水質汚濁防止法下水道法に違反する可能性があります(pH規制)。


  • 少量の場合:
    バケツなどの容器内で、重曹(炭酸水素ナトリウム)や消石灰(水酸化カルシウム)を少しずつ加えて中和します。泡(二酸化炭素)の発生が止まり、pH試験紙で中性(pH6〜8付近)になったことを確認してから、大量の水と共に排水します。


    • 注意: 一気に中和剤を入れると、急激な発泡や発熱が起こり危険です。


  • 大量の場合:
    産業廃棄物として処理する必要があります。「廃酸」としての扱いになるため、マニフェストを発行し、許可を持った産廃業者に委託してください。現場の産廃ボックスに粉末のまま捨てるのも危険です。雨水と反応して強酸性の液体が染み出し、周囲の金属を腐食させたり、回収作業員に怪我をさせたりする事故につながります。

予期せぬトラブル事例
意外なトラブルとして、**「ステンレスのサビ」**があります。「ステンレスは錆びない」と思われがちですが、硫酸水素ナトリウムが付着したまま放置されると、酸化被膜が破壊され、そこから急速に腐食(孔食)が進行します。
特に、ヘアライン仕上げや鏡面仕上げのステンレス建具近くで酸洗いを行う際は、厳重な養生が必要です。もし飛散した場合は、直ちに拭き取り、水拭きと乾拭きを徹底してください。
公益社団法人 日本コンクリート工学会:コンクリートの劣化原因(化学的侵食)
酸や硫酸塩がコンクリートにどのようなメカニズムで損傷を与えるか、専門的な図解とともに詳しく解説されています。

硫酸水素ナトリウムの危険性と取り扱いの必須装備

最後に、労働安全衛生法および現場の安全管理規則に基づく、具体的な取り扱いと危険性への対策をまとめます。現場監督や職長は、作業員に対して以下の周知徹底を行う義務があります。
GHS分類に基づく危険性
SDS(安全データシート)によると、硫酸水素ナトリウムは以下のように分類されることが多いです(濃度や製品による)。


  • 重篤な眼の損傷性: 区分1(最重度)
    眼に入ると、角膜が白濁したり、最悪の場合は失明に至る不可逆的な損傷を与える可能性があります。これは酸によるタンパク質の変性が原因です。

  • 皮膚腐食性・刺激性: 区分1または2
    皮膚に付着すると、発赤、痛み、火傷のような症状を引き起こします。特に汗をかいている首元や手首などは、粉末が付着して溶解し、高濃度の酸となって皮膚を焼くケースが多発しています。

必須の保護具(PPE)
「ちょっと撒くだけだから」という油断が事故を招きます。以下の装備は必須です。


  1. 保護メガネ(ゴーグル型):
    普通のメガネやサングラスは隙間から粉末や飛沫が入るため不十分です。必ず密閉性の高いゴーグル型を使用してください。

  2. 耐酸性手袋:
    軍手は絶対にNGです。液体が染み込み、酸の湿布をしている状態になり重症化します。ゴム製、ニトリル製などの不浸透性の手袋を使用してください。長めのものが推奨されます。

  3. 保護衣・長袖:
    皮膚の露出を避けてください。

応急処置
万が一、事故が起きた場合の初動対応が生死や後遺症を分けます。


  • 眼に入った場合:
    直ちに流水で15分以上洗眼してください。まぶたの裏まで念入りに洗う必要があります。こすっては絶対にいけません。その後、速やかに眼科医の診察を受けてください。「痛みが引いたから大丈夫」は禁物です。

  • 皮膚に付着した場合:
    汚染された衣類を直ちに脱ぎ、大量の水で洗い流してください。中和剤(重曹水など)を皮膚に直接かけることは、反応熱で火傷を悪化させる可能性があるため、まずは大量の水での洗浄が優先されます。

現場には必ず「洗眼器」または「洗眼ボトル」、そして大量のきれいな水を用意してから作業を開始することが、プロフェッショナルとしての最低限のマナーであり義務です。
厚生労働省:職場の化学物質管理(ケミカルリスクの低減)
化学物質のリスクアセスメントや、保護具の選定方法、最新の法規制について網羅的に情報が得られます。現場の安全教育資料作成に役立ちます。

 

 

 


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